::: エロゲーの殿堂 ::: |
◆ 舞台 ◆ |
港町「神浜市」にある私立「港陵学園」2年生の主人公「野村たかゆき」。同市に移り住んで3年が経過した時、かつて自分に暴力を振るい続け、「野村家」へ養子に出した憎むべき実の父親の死を告げられる。 ゲーム内の期間は7月1日(木)から始まり30日(金)までの、タイトル通り30日間。移動場所は自宅を中心として、学園や繁華街、中華街など市内の主要箇所となる。 |
◆ ターゲット ◆ |
攻略可能な女性は4人。内訳は義母、義姉、義妹の同居家族と、同級生が各1名ずつ。Hシーンは全て和姦で、回数は女性1人に付き各2回ずつ割り当てられている。 Hシーンにはアニメーションを採用し、1シーン内に何カットか用意されているがテンポは悪い。またフィニッシュまで描かれているシーンであっても尺は短く、テキストも淡白でアニメを生かしきれていない。 |
◆ システム ◆ |
各種音量のON・OFF、テキストスピード調節(2段階)を搭載し、随時セーブ・ロード(スロット10)も可能だが、再開はシーン冒頭からとなる。スキップはCtrl強制で、既読・未読判別は無し。また、オートモードや過去ログは非搭載。CG閲覧は順番に表示される形式で、シーン回想と共にサムネイルやタイトルは付されていない。起動自体はディスクレスでも可能だが、アニメはディスクから読み込むため実質的には不可。 マニュアルの内容と実際の機能が微妙に異なっており、アンインストールはフォルダごと削除する形。修正ファイルを使用しても相当不安定なシステム周りで、音質も全体的に歪んでいるなどかなり劣悪な環境。 |
◆ シナリオ ◆ |
マルチエンド形式のAVGで、エンディングは4種類。女性1人に付き1つのエンドが用意されている。謎の真相を追究して行くスリル&サスペンスなストーリーだが、基本は一本道。そのため物語途中の選択肢は女性に関するものに限られ、どのような選択をしても本筋には影響を与えない。エンドで結ばれる女性が変化するだけ。 強く憧れていた父親から突然虐待を受けて、すっかり厭世的になってしまった主人公。しかし不可解な父親の死を契機に、それなりに平穏だった日々に少しずつ陰りが見え始める。得体の知れない圧力を感じた主人公は、事件の真実を突き止めるため、幼い頃に鍛え上げられた精神力を頼りに裏社会へと乗り込んで行く。 |
◆ 総評 ◆ |
【学園ハードボイルド】 父の怪死から始まる一連の騒動がメインストーリーとなるが、同時に周囲の女性達との恋愛模様も描かれている。しかし終盤に入ると事態は二転三転し、その急展開に引き込まれて行く一方で、恋愛方面はそっちのけとなる。そのためフラグの立った女性とのエンドを迎えても、既に物語がミステリー側に大きく傾いているため、どこか唐突な印象を受けてしまう事から、恋愛面との両立の難しさを感じさせる。 それでもその本筋の方ではシリアスなムードを実に巧く演出している。何気ない日常の背後で何かが蠢いている事を示唆する細かい描写でジワジワと恐怖感を煽り、また中盤以降は誰も彼も怪しく見える様な緊張感のある展開でプレイヤーを疑心暗鬼に導くなど、シナリオは高い水準にある。 【似て非なるもの】 1999年4月に「海月倶楽部」から発売された本作。Hシーンにおけるアニメーションの導入、シナリオ原案として参画したbucci氏、そしてメーカー名に付された「海月」という文字。これらは「jellyfish(旧:海月製作所)」との関連を想起させるが、実際には直接の関係は無い。 製作元の海月倶楽部は、出版を本業とする「ぶんか社」がエロゲーへ進出した時のブランド名で、本作がその第一弾となる作品として送り出された。通常のAVGの他にネットワーク対戦機能を同梱するなど、実験的な試みも導入された本作だったが、肝心の売上は伸びず、同ブランドは本作のみで消滅。処女作にして最終作となってしまった。 ちなみにさっさとエロゲーに見切りを付けた「ぶんか社」は、現在コンシューマに進出している。 父親に対する憎悪から、他者との接触まで避けるようになった主人公。しかし温かい家族や級友に支えられ、やがて父の真の意志を知る。そしてその父の成し得なかった事をやり遂げて、本当の意味で亡き父を超える事を目指す正統派の成長物語。 折角ストーリー自体は良質なのに、残念ながらシステム周りを始めとするその他の要素に足を引っ張られている。 |
初稿:2006.02.23 |
30DAYS
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