::: エロゲーの殿堂 ::: |
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◆ 舞台 ◆ |
大正6年(1917)年、櫻沢家の当主が園遊会の最中に変死体となって発見された。その後継者がまだ幼少であるため、主人公「白石実」はその後見人として、婚約者の待つ櫻沢家へと赴く事になった。 ゲーム内の期間は不明。移動場所は櫻沢家の屋敷内。純和風の本邸と、洋風の別邸を行き来する事になる。 |
◆ ターゲット ◆ |
攻略可能な女性は4人。内訳は清楚1、双子1組、そしてメインヒロインにして一方の主人公となる女性(袴)が1名。メイド(女中)も登場するが、こちらはサービスカットのみで、主人公とのカラミはない。 Hシーンは1人に付き1回。双子はワンセットのために3Pとなる。1シーンでCGは4枚ずつ用意されているが、テキストは淡白であり、尺も短い。また特殊なシチュエーションも無く、総じてエロは薄い。 |
◆ システム ◆ |
各種音量調節、テキストスピード調節を搭載し、ディスクレス起動も可。セーブ・ロードは移動画面のみ可能で、スロットは全50箇所。ただし各章ごとにスロットが独立しているため、10箇所ずつ配分される形。 スキップはリターン(スペース)強制で、既読・未読判別は無し。過去ログ(音声履歴無し)も搭載しているが、各シーンの冒頭までしか表示されない。フルスクリーン固定。 マルチサイトに伴う主人公の切り替えはワンクリックで行う事が出来る。また、カーソルも主人公の性別によって「♂」「♀」と変化するので、今どちらの主人公でプレイしているかが一目瞭然。マルチサイトの老舗だけあって、この辺りのシステムは洗練されている。 一方、フルボイスのため主人公2人にも声(中原茂,岡本麻弥)が当てられているが、カットする事は出来ない。 |
◆ シナリオ ◆ |
一本道のAVGで、男女2人の主人公によるマルチサイトを採用している。ただし2人の主人公に割り当てられたストーリー上のボリュームは対等ではなく、男性の方に重点が置かれている。MAP移動式であり、次にどこへ行けばストーリーが進むかが表示される親切設計。しかし時には寄り道もしないと、CGを取りこぼす事もある。 時代の雰囲気を醸し出すため、テキストには「ゐ」や「ヱ」などが用いられ、セリフ回しも現代とは異なる独特のもの。また、メッセージは下から上に流れ、画面途中で消えていく珍しい形式。 物語は全5章構成だが、第1章は登場人物の顔見せと新たな事件の展開まで。マルチサイトが始まるのは第2章からとなる。基本的には余りザッピングせず、行き詰まるまでは一人の主人公で進めた方が、ストーリーの把握上都合が良い。 第4章では、二手に分かれて暗闇に包まれた屋敷内を探索するシーンがある。本作の山場であり、緊張感の溢れる名場面。 |
◆ 総評 ◆ |
【猟奇ミステリー】 ポツポツと滴る雫の音、無邪気な少女と惨殺体とのコントラストが静かな恐怖感を煽る、衝撃的なオープニングで幕開ける本作。そして登場する怪しげな双子や若き探偵。そこへ「大正」という時代背景にマッチしたBGMが拍車をかける。物語は、まるで横溝正史の描く猟奇的な世界を髣髴とさせる快調な滑り出しを見せる。 しかし、この作品における主人公(男)の役割は、謎を解くことでも、また事件を解決に導くことでもない。それらはエンディングで最初にクレジットされた真の主役である「探偵」の仕事。本作の主人公は事件に振り回され、屋敷内をうろついて夢と現実の境を彷徨う哀れな人物でしかない。主人公はこの事件を通じて、人形の様に生きて来た自分自身についてひたすら自問自答を繰り返すだけ。 結局の所、犯人探しは本作の主目的ではない。物語が進むにつれて犠牲者は拡大して行くが、そこに主人公の推理や判断が介入する余地は無く、プレイヤーはただ惨劇の行方を見守るだけ。 良い素材を取り揃えただけに、素直に「探偵・ミステリー物」へと流れなかった点は残念。 【The Murder of Roger Ackroyd】 序盤にて主人公(女)は、一方の主人公(男)が犯人ではないのかと疑うが、これは中々面白い演出。プレイヤーは男の主人公も操っているわけで、もしかしたら自分の操っている男が犯人なのか?と思わせる巧妙なトリック。これは推理小説でも稀に用いられる手法で、ストーリーテラーが実は犯人だったというトリックにも通ずるものがある。 残念ながら本作ではそこまで突き詰められてはおらず、すぐに「主人公(男)=犯人」説は否定されてしまう。この路線で行けば「主人公が主人公を追い詰める」といった、マルチサイトという形式を最大限に生かしたストーリーにも成り得ただけに惜しまれる点。 【最後の禁断】 現代(199X)、未来(2017)と続き、そして本作では過去(1917)へと戻った「禁断の血族」。ストーリーは、奇しくも初期ドラクエシリーズと同じ時系列の辿り方だが、本作は初代『禁断の血族』へと繋がるわけではなく、他の2作とは完全に独立している。 初代が一本道、次代がマルチエンド、そして本作でマルチサイトと、常に異なるアプローチを試みてきたこのシリーズ。本作では原画家も替わり、初めてWindowsをプラットフォームとして製作された。シリーズの象徴でもあるメイドも、女中として引き続き登場している。 しかし、シリーズの要であったエロを捨ててしまった点や、メイドの扱いがぞんざいである点など、果たして「禁断の血族」の名を冠する必要があったのかについては疑問が残る。
真犯人の正体は予想の範囲内だが、一箇所だけ予想を上回る真相も用意している。最後は哲学的な領域に足を踏み入れてしまうが、決して悪いシナリオではない。 |
初稿:2005.04.29 |
散櫻 〜禁断
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