::: エロゲーの殿堂 ::: |
◆ 舞台 ◆ |
内定をもらって就職活動も一段落した、大学4年生で22歳の主人公「須藤竜一」。学生生活最後の夏休みを迎えたある日、友人から行き先も日程も不明の「瀬登内海ミステリーツアー」に誘われる。 ゲーム内の期間は船内で3日、島内で一泊二日の日程となっているが、正味一日で終わる。移動場所は校庭を中心として、校舎や神社、病院といった島内各所の施設となる。 |
◆ ターゲット ◆ |
攻略可能な女性は5人。内訳はメインとして義妹、眼鏡、ギャル系の3名と、サブとして黒髪、お姉系の2名。その他に主人公以外のHシーンも幾つか用意されている。 Hシーンは陵辱チックなものもあるが、基本的には全員和姦。回数はメインヒロインの義妹と眼鏡が2回、ギャル系が3回となり、サブのお姉系と黒髪は1回ずつ。フェラや放尿、拘束といったシチュエーションもあり、1シーンで2ラウンド消化する場合もあるが、全体を通してほぼノーマルな内容で、フィニッシュシーンは今一つ弱い。 一方で、主人公がカラまない大人同士のHシーンはやや濃い目の仕上がりとなっている。 一部のHシーンではアイコンが変化する画面クリック方式となるが、普通にテキストが流れるだけの「ノーマルモード」に切り替える事も出来る。 |
◆ システム ◆ |
各種音量調節、オートモード、テキストスピード調節、過去ログ(音声履歴有り)を搭載し、一部のシーンを除き随時セーブ・ロードも可能(スロット10)。スキップは既読・未読判別も出来るが、その都度「環境設定」から行わなければならない。画面はフルスクリーン固定で、ディスクレス起動も不可。 最大の特徴は進行に応じて自動的に作成される「バックアップツリー」。文字通りツリー型で、任意の場所をクリックすれば一発で該当シーンから再開される。ストーリーを細かいセクションに区切っているため、事実上セーブいらずとなる洗練されたシステム。 |
◆ シナリオ ◆ |
マルチエンド形式のAVGで、エンディング数は5種類。全ての謎が明らかになるトゥルーエンドの他に、普通に女性と結ばれるだけのエンドや謎を残したまま終わるエンドがある。その他にもエンディングテーマの流れないバッドエンドが数種類用意されている。 基本的には会話場面が中心となる通常のAVGだが、ルートによってはMAP移動式となり、画面クリックによる宝探しや、文字を直接入力して犯人を当てる要素なども織り込まれている。 ストーリーは大きく4つのルートに分かれているが、最初に入れるのは「応化ルート」と「ミステリールート」の2つのみ。エロ要素補完用のショートストーリーである「言霊ルート」は、ミステリールートを進める内に入れるようになる。トゥルーエンドに繋がる「百鬼ルート」に関しては、全ルートに散りばめられた「小説」を全て集めた後、「百鬼モード」を開くとスタートする。こちらは分岐が一切無い一本道。 メインとなる3人のヒロインは、各々に対応したエンドを迎えると後日談が出現する仕組み。 |
◆ 総評 ◆ |
【Lost Island】 本作の主舞台となる「応化島」のモデルは、言わずと知れた「軍艦島」。応化島の背景設定や、島そのもののレイアウトまでネタ元とほぼ同じ内容になっている。 長崎県の沖合いに浮かぶ全周1km程度の軍艦島(正式名:端島)は、他に例を見ない程の異様な景勝を誇り、今や廃墟美を追求する人々のメッカとなっている。無人となって既に30年以上が経過し、現在ではこの島を世界文化遺産に登録しようとする動きもあるほど。しかし入島は規制されており、気軽には見学出来なくなっている。 その点本作では、移動可能な場所は島の一角のみではあるものの、移動シーン等に島内を再現する美しい3Dムービーを使用しており、軍艦島を疑似体験するという別の意味でも使える内容。 【OVA】 2003年3月にピンクパイナップルから『百鬼 一ノ鬼』が発売され、その後同年9月までに『二ノ鬼,三ノ鬼』がリリースされ、計3作で完結した。 ストーリーはゲームの「ミステリールート」をベースとして、他のルートの内容も交えつつ最後は「百鬼ルート」へと繋がる構成。そのためかなり駆け足気味の展開で、無茶な設定も多い。ストーリー進行の都合上Hシーンの回数はゲームと同様に少なめで、作画レベル・エロ度共に並程度。
特異な無人島という素材、その設定を生かしつつ構成されたシナリオ、そしてその流れを視覚的に表現したバックアップツリーシステムなど、どれも水準以上の仕上がり。にも係わらず、面白味もなくダラダラと続く退屈な会話シーンがストーリーのテンポを悪くして、上掲の良点を台無しにしているのが何とも惜しまれる作品。 |
初稿:2006.03.20 |
百鬼 |