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天使のいない12月

−願ったのは束の間の安らぎ 叶ったのは永遠という贖罪−

人間関係は軽く薄く小さくがモットーであり、なにごとにもいい加減で投げ遣りな生活を送っている主人公。

特にやかましい妹がいるせいもあって、女は面倒だと思っている。

 そんな主人公と違い、友人は女の子との恋愛に時間を費やし、肉体関係になることに至上の価値を求めているので、
主人公に恋愛を勧めるのだが、まるで聞く耳を持たない。

 ところが、ある女の子とのささいな言い争いから、なりゆきと興味本位でその場限りの関係を持ってしまう。

公式サイトより

ストーリー エロ 感動 システム キャラ ボリューム 総計 主人公
B Ca B Ba B Caa 61 D
 
メーカー
発売日
定価
シナリオ
原画
備考
:Leaf
:2003.09.26(Fri.)
:\8,800-
:三宅章介
:なかむらたけし,みつみ美里
DL版あり
 
ジャンル
音声
名前変更
修正ファイル
属性
季節
:AVG
:○
:○
:−
:鬱,学園
:初冬
 
OS
CPU
メモリ
DVD-ROM
解像度
HDD
:Windows98/2000/Me/XP
:PentiumV500MHz以上
:64MB以上(推奨128MB以上)
:倍速以上
:800×600,FullColor以上
:1GB以上
 
◆ 舞台 ◆
 高校2年生の主人公「木田時紀」は両親と妹との4人家族で、他者との関係を避けつつ、怠惰な生活を送っている。ある日、屋上から不用意にタバコを放り投げてしまうが、それを拾ったのは名も知らぬクラスメイトだった。

 ゲーム内の期間は12月24日までとなるが、時間の経過は不明。移動場所は学園や自宅、バイト先などが中心となり、ホテルも頻繁に訪れる。
 
◆ ターゲット ◆
 攻略可能な女性は5人。内訳は、同級生3(眼鏡1、長髪1、ツインテール1)、下級生1、女子大生1。女性達の髪の色に赤・緑・青といった色は使用しておらず、黒・茶系の落ち着いた雰囲気。Hシーン数は女性によってバラつきがあるが、CGを使い回しているシーンもあり、大体4〜5回。最少は下級生の2回となる。
 Hシーン自体はノーマルで、特殊なシチュエーションも無い。日常シーンでは「セックス」を連呼する女性達だが、Hシーンでの淫語は無し。画自体はモザイクが薄めでかなりエロ度が高いものの、Hシーンの尺は短く、テキストもあっさり目。
 
◆ システム ◆
 各種音量調節、オートモード、テキストスピード調節、過去ログ(音声履歴有り)を搭載し、随時セーブ・ロードも可能。セーブスロットは全40箇所で、サムネイル付。スキップは既読・未読判別可能だが、設定画面から行わなくてはならない。画面効果の調整も出来るが、ディスクレス起動は不可。タイトル画面に戻る度にメーカーロゴが表示されるが、Ctrlでスキップ可。

 カーソルをゲーム画面の外に移動すると、自動的にメッセージウィンドウも消える。画面右隅に現実の日付・時間を表示出来るなど、独自の機能も搭載している。
 
◆ シナリオ ◆
 マルチエンド形式のAVGで、エンディングは5種類。基本は女性1人に付き1つとなるが、中にはバッドエンドの用意されている女性もいる。メッセージウィンドウの現れる通常のAVGだが、主人公の述懐シーンではビジュアルノベル風に変化する。
 選択肢にヒネリは無く、狙った女性のルートに入るのは難しくない。オールクリア後には女性陣の声を担当した声優からのメッセージが出現する。

 ストーリーは厭世的・悲観的な主人公の視点で進行していく。そして女性陣もまた、何かしら心に傷や悩みを抱えている。これら破滅的な登場人物の織り成す、一風変わった青春物語。
 
◆ 総評 ◆
【POP&DECADENCE】
 現在にも未来にも希望を持たず、刹那的なSEXのみに救いを求めて依存する病的な登場人物達。学園生活においても日常的に暴言や罵声が飛び交い、殺伐とした雰囲気が漂っている。
 そしてメインヒロインではないが、2人のヒロインのシナリオに絡むなど、それなりの存在感を有する実妹。しかしそこには兄にひたすら想いを寄せる、今やステレオタイプとなった従順な妹の姿は存在しない。彼女もまた、兄である主人公に対して終始毒づき、容赦なく悪口雑言を浴びせかけて来る。
 学園や自宅といった場所を問わず、ストーリー全体が沈鬱なムードに覆い尽くされている。

【You suffer but why?】
 主人公は自らの人生について、これから先に起こる事とその限界を見切ったつもりでいる。そのため人生に対して期待出来ずにいるが、さりとて自分一人では人生を終わらせる気概も持ち合わせてはいない。結果、ひたすら自堕落な日々を送るだけの生活となっている。
 しかしその裏側では目標や目的を定め、そこに向かって日々努力を重ねる同年代の学生達もいる。そんな彼らの放つ輝きに、もし主人公が触れてしまったらどうなるのか。その時は、努力をしても結果が現れなかった場合の絶望感に怯えているだけの本当の自分自身と、否が応でも向き合わねばならなくなる。
 だからこそ主人公は、己の小さな自尊心を守るため、ペシミストを気取りながら人との係わり合いを避け続ける。それは無意識に生じる、本能的な自衛行為の発現に他ならない。

 

 恋愛とは美しいものばかりではなく、また物語の先には必ずしも「HAPPY END」が待っているわけでもない。純愛直球型の物語では、あえて触れられる事のない暗黒面ばかりを徹底的に抉り出した本作。ゲームという虚構の中だからこそ楽園を求めるプレイヤーには決して向かない作品。
 Leafが初めて製作したフルボイス作品は、萌えゲー全盛の時代に叩き付ける想像を超えた怪作だった。
 

初稿:2005.06.21

天使(てんし)のいない12(がつ)

 

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