::: エロゲーの殿堂 ::: |
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◆ 舞台 ◆ |
主人公「宏治」は恋人の勧めに従い、医療センターで精神分析のデータ標本として協力するアルバイトをしていた。約3ヵ月間の拘束で、高額の報酬を手にする予定。しかし最近になって、毎晩の様に続く悪夢と、徐々に曖昧になっていく記憶に悩まされていた。 ゲーム内の期間は、複雑に時間軸が絡み合っているために不明。移動場所は、医療センター内部の自室、ロビーや屋上、診察室など。 |
◆ ターゲット ◆ |
攻略可能な女性は8人。現代編と未来編で各4人づつの配分。進行ルートによってエロ度は大きく変わる。エロ面に関する本作の本領は「DREAM_2」以降。 姉妹3P、レズ、緊縛、搾乳と、数は多くないが濃いシチュエーションも用意されている。女医の声優(吉永あゆり)の熱演振りは、後年発売される『DESIRE -完全版-』のマコトの片鱗を感じさせる。 現在編と未来編では原画家が異なるため、キャラデザインの方向性は全く異なっている。またHシーンにおけるCGの使い回しも幾つかある。その他、アニメを使用している射精シーンが2箇所。 |
◆ システム ◆ |
テキストスピード調節(2段階)、BGMの音量調節、音声のON・OFFを搭載。随時セーブ・ロード(スロット6)は可能だが、再開はシーン冒頭からとなる。テキストは、音声が全て読み上げるまで次に進めない。音声を途中で切り上げるのは右クリック。フルスクリーン固定で、過去ログやオートモード、スキップは非搭載。ディスクレス起動も不可。シーン回想は無く、CG閲覧のみ。 |
◆ シナリオ ◆ |
【Main
Story】 マルチエンド形式のAVGで、エンディング数は全7種類。それぞれ「DREAM_●」と名前が付されている。ただし、初回プレイ時は「DREAM_1」のルートが確定している。「DREAM_2」以降のルートは、「DREAM_1」をクリアした後でなければ入れない仕様。 全てのプレイヤーが避ける事の出来ない強制ルート「DREAM_1」。この特別扱いである「DREAM_1」こそが、本作の真のストーリー。シリアス路線で、終始謎に満ちた展開となっている。 【Another Story】 「DREAM_2」と「DREAM_3」は、時代の異なる2人の主人公が入れ替わる表裏一体のストーリー。「DREAM_1」の流れとはほぼ無関係で、登場人物は同じであっても、役割やポジションが大きく変化しているキャラもいる。 この2つのシナリオは、2人の主人公の視点から物語を捉えた、ある意味でマルチサイトとも言える。両シナリオのクリア後にはマルチサイトらしく、あの時にもう一方の主人公が何をしていたかが分かる仕組み。更に「DREAM_3」に関しては、選ぶ女性によってエンディングが4つに分岐する通常のマルチエンド形式。 上記2ルートは「DREAM_1」の世界観を流用しただけの、付随的なパラレルワールド。コメディ&エロス路線がベースとなっている。 【Extra Story】 「DREAM_1〜3」までのエンドに到達すると、最後のルート「DREAM_∞」(肉奴隷 トレーシーの憂鬱)に入れるようになる。これまたガラリと雰囲気が変わり、主人公も女性に替わる。 「DREAM_∞」の設定は「DREAM_1」に準じている。タイトルからして分かる様に、こちらはひたすらエロスのみを追求したショートストーリー。 |
◆ 総評 ◆ |
【我思う、故に我在り】 メインストーリーは主人公が奇妙な夢に度々うなされる、という形で進行して行く。やがて現実と夢が交錯し始め、自分の見ているのは本当に夢なのか、むしろ現実だと感じている方が夢ではないのか、と疑問を抱き始める。 本作のキャッチコピーや物語中でも語られている通り、荘子の「胡蝶の夢」を題材としたシナリオ。確かに今、自分の見聞きしているものが、夢ではなく現実であると証明する手段などありはしない。ジャンルはSFだが、扱っているのは人類にとっては普遍のテーマの1つ。 【埋もれた秀作】 本作がPC98版で発表されたのは『DESIRE』の後となる1994年12月9日。そしてその後の1995年に『EVE』がリリースされた。同時期に2つの大作に挟まれてしまったために、時代に埋もれてしまった形。Windowsへの移植に際しても、上記2作の様にリメイクされる事もなく、他のシーズウェア作品と同様、音声を追加しただけのほぼベタ移植だった。 本作は、菅野氏の手掛ける初のマルチエンドという意欲作。秀逸なSFトリックを仕掛けた「DREAM_1」は、傑作と言っても過言ではないが、物語自体は余りにも短い。そしてその後のストーリーも「DREAM_1」の内容を補完するものではなく、また世界観を広げるものでもなく、設定を利用しただけのコメディ的な作品だったため、小さくまとまってしまった感がある。
物語は、主人公の記憶の混乱を契機として、自分が一体何者なのかを問いかけて来る。ありがちな記憶喪失モノとは明らかに次元の違う作品。特に、交錯する世界へと引き込む仕掛けは実に巧妙。 |
初稿:2004.11.01 |
XENON 〜夢幻
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